今回企業分析を行うのはJACリクルートメントです。JACリクルートメントは人材紹介サービスを提供している企業で、日本国内だけでなく、アジアやヨーロッパの各国にも拠点を持っており、グローバルに人材紹介サービスを展開しています。
JACリクルートメントはどんな企業か
会社名 | 株式会社JACリクルートメント |
証券コード | 2124 |
設立年 | 1988年 |
従業員数 | 1952人 (2023年12月末時点) |
業種 | サービス |
何をやっている会社か?
JACリクルートメントは人材紹介サービスを中核事業とする会社です。顧客である企業に転職・就職希望者を紹介して手数料を取るビジネススタイルで利益を出しています。
人材紹介サービスは、求職者と企業との間に入って両者のマッチングを行い収益をあげるビジネスのため、人材そのものを雇用する必要がなく、一般的に売上原価がほとんど発生しません。その結果JACリクルートメントの利益率は非常に高いことが特徴です。
主に以下の3つの領域で事業を展開しています。
- 国内人材紹介事業
- 国内求人広告事業
- 海外事業
国内人材紹介事業
求人企業に対して候補者を紹介し、その候補者が企業に入社すると手数料を得るビジネスを展開。
国内求人広告事業
求人企業から募った求人案件を、株式会社キャリアクロスが運営する求人広告サイト「キャリアクロス」に掲載して広告掲載料を得るビジネスを展開。
海外事業
海外での現地採用を含めた人材紹介事業を展開。
何で稼いでいる会社か?
各事業の売上高


JACリクルートメントは3つのセグメントの事業を展開していますが、売上の90%ほどは国内人材紹介事業から得ています。海外事業も少しずつ売上を伸ばしていますが、売上全体に対する割合は10%程度と大きくはありません。
年間給与

平均の年間給与は800万円を超える水準で推移しています。コロナによって求人数が大きく減少した2021年は給料が下がっているものの、業界中央値と比べても非常に高い水準を維持できています。
ファンダメンタルズ分析
主なKPI指標
指標 | 実績 | 業界平均 |
---|---|---|
営業利益率 [%] | 23.8 | 6.7 |
自己資本比率 [%] | 73.2 | 51.4 |
流動比率 [%] | 357 | 204.8 |
ROE [%] | 9.8 | 9.9 |
一人当たり売上総利益 [百万円] | 16.3 | 9.7 |
配当利回り [%] | 3.58 | – |
成長性
売上高と営業利益率

売上高は右肩上がりに成長しています。コロナの影響によって求人数が大きく減った2020年は売上高が減少していますが、2021年以降は再び売上高が増加しています。
営業利益率は2018年以降は大きく変わらず、24%程度を維持しています。
キャッシュフロー

有価証券報告書によると、2017年に投資CFが大きくマイナスとなっている理由は投資有価証券を取得したからのようですが、この投資有価証券は2020年に売却しており、そのため2020年の投資CFはプラスとなっています。
一方で2018年に投資CFが大きくマイナスとなっているのは、この年にJAC Recruitment Asiaの全株式を取得して完全子会社化した際の支出の影響です。JAC Recruitment Asiaを子会社化することで海外事業展開を推し進める狙いがあり、先述の事業別売上でみたように、少しずつですが海外事業の売上高比率は増加傾向です。

JACリクルートメントのキャッシュフローの推移を、同じ人材紹介サービス事業をおこなっているMS-Japanと比較してみます。JACリクルートメントは近年は大きな投資は行っていませんが、順調に営業CFを伸ばしています。
一方で同業他社のMS-Japanは2024年にオーストラリアのFOUR QUATERSを子会社化したため、投資CFが大きくマイナスになっています。JACリクルートメントとMS-Japanのどちらも海外事業へ積極的に投資を行っており、人材紹介サービスにおける海外事業の今後の成長は大きなポイントとなりそうです。
安全性
バランスシート

次にJACリクルートメントのバランスシートの構成を見てみます。右側の貸方を見ると純資産が70%程度を占めており、残りはほとんどが流動負債となっています。左側の借方を見ると、流動資産が大部分を占めていることがわかります。流動負債に対する流動資産の割合である流動比率は300%を超えており、財務の安全性は問題はないレベルです。
流動資産の内訳

流動資産の内訳を見ると、現金及び預金や売掛金がほとんどを占めていて、当座比率は309%とこちらも非常に高い水準であることが特徴です。流動比率と当座比率がどちらも300%を超える水準であり、財務の安全性は非常に高い企業と言えます。
現金と自己資本比率

現金等の金額は減少する年もありながらも、大きな傾向としては増加傾向になっています。自己資本比率も70%を超えており問題ないレベルです。
収益性
主な指標

事業の収益性を示す代表的な5つの指標について、業種中央値を3として5段階評価で示しています。
これまで見てきた通り、JACリクルートメントは非常に収益性が高い企業であるため、収益性の評価はすべての指標で5となり全く問題がない水準です。
ROE

ROEの推移を見てみると、コロナ禍の影響を強く受けた2020年を除いて、30%前後の非常に高い水準となっています。人材紹介サービス自体が収益性が高い事業であることに加えて、決算説明資料からJACリクルートメントが社員の生産性や収益性を重視した経営を行っていることが読み取れるため、その結果であると考えられます。
生産性
実績 | 業界中央値 | |
---|---|---|
一人当たり売上総利益 [百万円] | 16.3 | 9.7 |
労働生産性 [百万円] | 4.5 | 1.6 |
投下資本回転率 [回] | 2 | 1.4 |
生産性の指標も業界中央値を上回っており、問題ないレベルであると言えます。
株主への還元
配当金
配当方針
決算説明資料よると、JACリクルートメントの配当性向は60~65%を目標値としており、一般的な水準と比べると少し配当性向は高めです。
引用元:2023年12月期 決算説明会資料
一株配当と配当性向

コロナ禍となる2020年までの増配率は凄まじく、毎年数10%の増配率を達成していました。2020年は配当性向を大きく増やして配当金を維持していますが、2021年は配当性向をコロナ前の水準まで戻した結果減配しています。
近年は配当性向を目標値の60%程度に下げているものの、増益に伴い配当金も増配傾向となっています。配当性向が少し高いことと、景気敏感な事業であるため不況時の減配リスクが気になりますが、このまま高収益性を維持して業績の拡大が続くことで、増配を維持できることに期待したいです。