今回取り上げるのは、株式会社キューブシステムです。キューブシステムがどういう企業か、中核事業は何か、財務安定性や成長性に問題はないかについて見ていきたいと思います。
キューブシステムはどんな企業か
会社名 | 株式会社キューブシステム |
証券コード | 2335 |
設立年 | 1972年 |
従業員数 | 952人 (2024年4月1日時点) |
業種 | 情報・通信 |
何をやっている会社か?
キューブシステムは独立系のシステムインテグレーター(SIer)です。金融向け、流通向けのシステム開発が中核事業で、NRI等の大手IT企業の二次請け企業としてシステム開発を行う企業です。特徴として、営業専任組織がなく、エンジニア自身が営業も担当することで、素早く課題解決方法の提案を行い、受注拡大へつなげるという方針を取っています。
以下の3つのビジネスモデルで事業を展開しています。
- デジタルビジネス
- SIビジネス
- エンハンスビジネス
デジタルビジネス
コンサルティングサービスにより、顧客へ新たなビジネスモデル構築の提案を行う。2026年には売上高の10%を達成することを目指し、長期的には20%を目指す方針。
SIビジネス
システムの企画、設計、開発、導入まで行う。今後はクラウド環境への移行と新たなシステム運用モデルの構築を目指す。
現状は売上高の20%程度だが、2026年には30%、長期的には40%を目指し、エンハンスビジネスと同様に事業の中核になるように進める方針。
エンハンスビジネス
既存システムの追加開発、保守運用サービスを提供。現状は売り上げ全体の6割を占める中核事業。金融業、流通業、通信業が主な顧客。
何で稼いでいる会社か?
ビジネスモデル別の売上高の割合

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ファンダメンタルズ分析
主なKPI指標
指標 | 実績 | 業界平均 |
---|---|---|
営業利益率 [%] | 8.5 | 8.3 |
自己資本比率 [%] | 75.1 | 64.3 |
流動比率 [%] | 406 | 271 |
ROE [%] | 10.5 | 9.6 |
労働分配率 [%] | 24.4 | 39 |
配当利回り [%] | 3.06 | – |
成長性
売上高と営業利益率

事業別の売上高

2024年はSIビジネスの受注拡大とリソース集約の効果によって営業利益は増加していますが、エンハンスビジネスとデジタルビジネスの利益減少や人件費の増加の影響もあり、営業利益率としては減少しています。その結果、営業利益率は業界平均と同等レベルの水準となっています。
引用元:2024年03月期 決算説明資料
キャッシュフロー

2016年から2021年までの間の投資CFが少しマイナスである理由は、この期間に毎年1~3億円程度の有価証券の償還および投資有価証券の売却を行っていたためです。また2023年に財務CFが大きくプラスとなっている理由は、2022年12月にNRIとの資本業務提携を締結した際に、NRIに対して1630000株を割当てたことの影響です。
SI市場の規模と成長率
引用元:特定サービス産業動態統計調査
経済産業省の特定サービス産業動態調査よると、SI市場の売上高は特にコロナ禍以降で大きな伸びを見せており、2023年の売上高の成長率は8%になります。今後もDX化のニーズによる市場の拡大が見込まれています。
競合他社との比較

キューブシステムの競合他社の内、ハイマックスと東邦システムサイエンスもNRIを主な顧客に持つ二次請けIT企業であり、NRIのeパートナー(パートナー企業の中でも専門性の高い技術力、セキュリティレベルを持つ企業)に認定されています。
業績の伸びに関してはコムチュアが強さを見せていますが、キューブシステムも2024年は10%を超える伸びを見せており健闘しています。この要因は主には金融業向けのSIサービスの売上高が前年比で24.8%と大きく増加したことです。
安全性
バランスシート

流動資産の内訳

流動比率と当座比率が400%程度もあり、実質的な無借金経営になっているため財務基盤は非常に安定しています。
現金と自己資本比率

現金は堅調に右肩上がりで増えており、また自己資本比率も近年は70%以上となっていて問題ない水準です。
2023年に自己資本比率が大きく増加している原因は、NRIとの資本提携により約6.3億円の出資を受けたためです。
収益性
ROE

ROEは業界平均を上回る水準で推移しているものの、目標値である14%は達成できていません。
ただし2023年にROEが低下しているのは、NRIとの資本提携により6.3億円の出資を受けたことにより自己資本比率が上がったことが要因であり、業績が悪化したことがROE低下の原因ではないことには注意が必要です。
生産性
原価率と労働分配率

キューブシステム | 業界平均 | |
---|---|---|
売上高原価率 [%] | 78.2 | 57.6 |
労働分配率 [%] | 24.4 | 39.0 |
売上高原価率は78.2%と業界平均より高い水準ではあるものの、労働分配率は24.4%と平均以下の水準に抑えられており、人件費の観点では効率よく利益を出せています。
株主への還元
配当金
配当方針
有価証券報告書によると、2025年3月期より配当方針を一部変更し、連結配当性向の目安を従来の40%から50%へ引き上げる方針とのことです。
配当については、経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主各位への還元として連結配当性向 40%を目安に中間配当と期末配当の年2回、安定した剰余金の配当を継続して実施していくことを基本方針としております。
引用元:有価証券報告書
また、資本の充実に伴い、今後の事業展開および内部留保水準を勘案した上で、《VISION2026》第2次 中期計画において株主の皆様への更なる還元を目的に連結配当性向50%に引き上げることを2024年4月24日の取締役 会にて決議いたしました。
一株配当と配当性向

一株配当は過去10年間堅調に増配傾向を維持できています(2023年の記念配当の影響は除く)。
2024年は配当性向を50%への引き上げる方針の前倒し適用により、これまでよりも大きく増配しています。