沖縄セルラー電話

今回取り上げるのは、沖縄セルラー電話株式会社(以下沖縄セルラー)です。沖縄セルラーがどういう企業か、中核事業は何か、財務の安定性や事業の成長性に問題はないかについて見ていきたいと思います。

沖縄セルラーはどんな企業か

会社名沖縄セルラー電話株式会社
証券コード9436
設立年1991年
従業員数468人 (2024年3月時点)
業種情報・通信
引用元:企業HP

何をやっている会社か?

沖縄セルラーはKDDIを親会社とする通信事業者で、沖縄県でauブランドの通信サービスを提供しています。沖縄県内でのシェアは50%を超えており、沖縄県の地域に特化したマーケティングを行っていることが特徴です。

主に以下の3つのサービスを展開しています。

  • モバイルサービス
  • FTTHサービス
  • ライフデザインサービス

モバイルサービス

au、UQモバイルブランドの携帯電話の通信サービスを提供。

FTTHサービス

光回線のインターネット接続サービスを提供。旧沖縄通信ネットワークを2010年に子会社化し、光ファイバーインフラの提供を受けて光回線サービス「auひかりちゅら」を開始。

ライフデザインサービス

沖縄電力と提携して「auでんき」サービスを提供。沖縄電力が電力供給を行い、契約者への料金請求などの代理販売を沖縄セルラーが担当するという役割分担で事業を展開。

何で稼いでいる会社か?

各サービスの純増契約件数の推移

契約純増数

モバイルサービスとFTTHサービスにおける契約者の純増化件数はここ数年は横ばいの傾向が続いています。

一方で、au電気サービスは燃料費調整制度の上限設定廃止で2022年11月~2023年5月までauでんきの営業を停止しており、その影響で2023年は契約者数が減少していますが、2024年は再び増加へ転じています。

ファンダメンタルズ分析

主なKPI指標

指標実績業界平均
営業利益率 [%]21.88.3
自己資本比率 [%]82.364.3
流動比率 [%]424271
ROE [%]12.89.6
労働分配率 [%]39
配当利回り [%]3.42
直近期末決算時の数値

成長性

売上高と営業利益率

売上高

売上高と営業利益率はどちらも堅調に増加傾向となっており、特に営業利益率は20%を超える高い水準を達成しています。

キャッシュフロー

キャッシュフロー

次にキャッシュフローの推移を見てみます。フリーCFがプラスの状態で維持していることから、業績が順調であることと、積極的な投資はせずに安定した経営方針である事がわかります。

なお有価証券報告書によると、2024年に投資CFがプラスに転じているのは、工事負担金等の受け入れによる影響のようです。また財務CFが増加しているのは、資本効率の向上と株主還元のために40億円ほどの自己株式を取得したためです。

沖縄県の人口推移

沖縄セルラーは沖縄県の地域に密着した通信事業会社であるため、沖縄県の人口動態が業績へ影響を与えると考えられます。そこで沖縄県の人口の推移と今後の人口の予測について調べてみます。

沖縄県統計資料WEBサイトのデータを基にグラフを作成

近年の沖縄県の人口推移を見てみると、2021年までは毎年0.4%前後の増加率で人口が増えていましたが、それ以降は人口の増加がほとんどなく、横ばいの状態が続いています。

りゅうぎん総合研究所によると、外国人を含む沖縄県の総人口は今後減少傾向となり、2032年に145万人を下回り2070年には120万人を下回る予想です(引用元:りゅうぎん総合研究所)。今後の沖縄セルラーの業績がこれまでと同じように堅調に伸びていくと考えるのは少し楽観的な見方かもしれません。

安全性

バランスシート

バランスシート

沖縄セルラーのバランスシートの内訳を見ると負債の合計額が非常に小さく、そのため流動負債に対する流動資産の割合である流動比率は400%を超えており非常に高い水準となっています。

流動資産の内訳

流動資産

また流動資産の内訳を見ると、現金及び預金の金額は少ないものの売掛金を含めた当座資産の金額は419億円であり、これは流動負債と固定負債の合計額の181億円を上回っており、実質的な無借金経営を実現できています。これらのことから、沖縄セルラーの財務基盤は非常に安定していることがわかります。

現金と自己資本比率

自己資本比率

つぎに現金等の金額と自己資本比率の推移を見てみます。先ほどのバランスシートを見ても分かる通り、沖縄セルラー自己資本比率は非常に高く、80%を超える水準となっています。このことからも沖縄セルラーの財務基盤が安定していることがわかります。

収益性

ROE

ROE

ROEは12%弱の値で安定して推移しています。2024年にROEが増えている理由は、40億円程度の自己株式を取得した結果株主資本が減少した影響であると考えられます。

株主への還元

配当金

配当方針

企業HPに載っている経営目標によると、連続増配と配当性向40%以上を目標としているようです。

当社は、増収、増益、連続増配の3増と配当性向40%超を経営目標としております。

引用元:企業HP 経営目標

一株配当と配当性向

配当性向

一株配当と配当性向の推移を見ると、経営目標の通り連続増配を維持できており配当性向も40%を上回る水準となっています。今後は沖縄県の人口が減少していくと予想されている中で、どのように業績を拡大し連続増配を維持できるかが注目です。