今回企業分析を行うのは「旭情報サービス」です。旭情報サービスはITソリューションプロバイダーで、情報技術関連のサービスを提供しています。
旭情報サービスはどんな企業か
会社名 | 旭情報サービス株式会社 |
証券コード | 9799 |
設立年 | 1962年 |
従業員数 | 1790人 (2024年3月末時点) |
業種 | 情報・通信 |
何をやっている会社か?
旭情報サービスは独立系のSIer企業で、ネットワークシステムの構築や、システム運用・保守の業務を行っています。顧客先へ技術者を派遣して開発支援を行うSES事業が主な収益源となっています。
主に以下の3つの領域で事業を展開しています。
- ネットワークサービス
- システム開発
- システム運用
ネットワークサービス
オープン系サーバ、ネットワークシステムの構築、運用管理をはじめ、セキュリティ関連業務のほか、 各種ソフトのインストールやヘルプデスク、障害対応など幅広いサポート業務を行っています。
システム開発
業務系システムの設計・開発、組込み系ソフト開発・検証、ERP(業務パッケージ)等のソフト開発に関わる業務を行っています。
システム運用
汎用系システムの保守・運用管理を行っています。
何で稼いでいる会社か?
各事業の売上高


旭情報サービスはネットワークサービス、システム開発、そしてシステム運用の3つの事業を展開しています。それぞれの事業の売上高の割合を見ると80%以上がネットワークサービスであり、中核事業であることがわかります。また取引先別の売上高の割合は、50%以上が製造業となっています。
ネットワークサービスの主な事業内容はネットワークシステムの構築や運用管理なので、今後も継続して業績が拡大できるかどうかは、ITインフラ業界の成長性も大きく影響すると考えられます。
年間給与

年間の給与は業界水準より100万円以上低く、さらに伸び率も低いため業界水準との差が大きくなってきています。旭情報サービスはSES事業によって収益をあげていますが、一般的にSES事業は2次請け、3次請けとなるとその分だけ利益率が悪化するため、その結果年間給与が低くなっているのではないかと考えられます。
ファンダメンタルズ分析
主なKPI指標
指標 | 実績 | 業界平均 |
---|---|---|
営業利益率 [%] | 9.7 | 8.3 |
自己資本比率 [%] | 78.7 | 64.3 |
流動比率 [%] | 357 | 271 |
ROE [%] | 9.8 | 9.6 |
配当利回り [%] | 3.48 | – |
成長性
売上高と営業利益率

売上高は堅調に右肩あがりの傾向です。一方で営業利益率は近年は横ばいとなっていますが、業界水準は上回るレベルを維持できています。
キャッシュフロー

2021年以降は投資CFがプラスの状態が続いています。2022年の投資CFはマイナスですが、有価証券報告書によると投資有価証券や有価証券を取得した影響が大きいです。そのため有価証券の取得の影響を除いた固定資産の取得による支出の推移を見ると、2021年以降は投資額が低下していることがわかります。

これを見ると、近年は事業の拡大のための投資が上手くできていなさそうです。

事業で稼いだお金を上手く投資に回せているかを見るために、近年の営業CFと投資CFの関係性を見てみます。上記のグラフの横軸が営業CFで、縦軸が投資CFです。また比較のために同業他社のビジネスブレイン太田昭和の結果も載せています。
赤色で示した旭情報サービスはグラフの右上の領域へ推移する傾向があることがわかります。これは営業CFは増える傾向ではあるものの事業への投資額は減ってきており、稼いだお金を上手く事業へ投資することができていないことを示しています。
一方で緑色で示したビジネスブレイン太田昭和は、グラフの右下の領域へ推移しています。これは営業CFが増えるにつれて事業への投資額も増えてきていることを示していて、稼いだお金を上手く投資に回せている理想的な状態だと言えます。
営業CFと投資CFの関係からも、旭情報サービスが事業への投資が上手くできていないことがわかります。
安全性
バランスシート

旭情報サービスのバランスシートを見てみると流動資産の割合が大きく、流動負債に対する流動資産の割合である流動比率は357%と非常に高いです。
流動資産の内訳

流動資産の内訳を見ると、現金及び預金や売掛金、有価証券がほとんどを占めていて、当座比率は354%とこちらも非常に高い水準であることが特徴です。流動比率と当座比率がどちらも300%を超える水準であり、財務の安全性は非常に高いです。
現金と自己資本比率

さらに現金等の金額も堅調に増えており、自己資本比率も80%近い水準であるため、財務的な基盤は非常に安定しています。
収益性
ROE

コロナ禍以降から2023年まではROEが業界水準を下回っていましたが、2024年は当期純利益が前年比で17.4%と大きく増加したことでROEも業界水準を上回るレベルに改善しました。
生産性
実績 | 業界中央値 | |
---|---|---|
一人当たり売上高 [百万円] | 8 | 22 |
労働生産性 [百万円] | 0.8 | 1.8 |
投下資本回転率 [回] | 1.3 | 1.4 |
生産性の指標を業界水準と比較すると同等から少し悪いぐらいとなっており、旭情報サービスの生産性はあまり良いとは言えません。
株主への還元
配当金
配当方針
旭情報サービスの決算報告資料には、配当性向40%を目処に株主還元を充実させると書かれています。
引用元:2024年3月期 決算説明会資料
一株配当と配当性向

増配が無く現状維持の年もありますが、減配せずに増配傾向を維持できています。配当性向も目標値である40%に近い値になっており、無理をして配当を出していることはなさそうです。