今回取り上げるのはアルプス技研です。アルプス技研は技術者派遣や技術開発支援を行う企業で、特にエンジニアリングに特化したサービスを提供しています。
アルプス技研はどんな企業か
会社名 | 株式会社アルプス技研 |
証券コード | 4641 |
設立年 | 1971年 |
従業員数 | 6107人 (2023年12月時点) |
業種 | サービス業 |
何をやっている会社か?
アルプス技研は主に以下の2つの領域で事業を展開しています。
- アウトソーシングサービス事業
- グローバル事業
アウトソーシングサービス事業
技術者派遣を中心に、技術プロジェクトの受託、事務派遣、職業紹介等のサービスを提供している。
グローバル事業
海外におけるプラント設備、機械・設備機器等の据付及びメンテナンスや人材サービスを展開している。
何で稼いでいる会社か?
各事業の売上高

アルプス技研は主に2つの事業を展開していますが、売上の90%以上は人材派遣のサービスであるアウトソーシングサービス事業で構成されています。近年は少しずつグローバル事業の割合が増えてはいるものの、今後もアウトソーシングサービス事業がメイン事業であることは変わらなさそうです。
各事業の営業利益

営業利益についても、90%以上はアウトソーシング事業から得ています。コロナの影響が大きかった2020年度は減益となっていますが、それ以降の営業利益は増加傾向であり2022年にはコロナ前を上回る水準にまで回復しています。
従業員の年収

年収は500万円程度と、高くもなく少なすぎることもないといったレベルで、業界中央値を少し下回る程度で推移しています。
ファンダメンタルズ分析
主なKPI指標
指標 | 実績 | 業種中央値 |
---|---|---|
営業利益率 [%] | 10.8 | 6.7 |
自己資本比率 [%] | 67.2 | 51 |
流動比率 [%] | 246 | 205 |
ROE [%] | 22.0 | 9.9 |
1人当たり売上総利益 [百万円] | 7.6 | 9.7 |
配当利回り [%] | 3.98 | – |
成長性
売上高と営業利益率

売上高はコロナ禍の2020年を除いて順調に増加しています。営業利益率も10%を超えていて人材派遣サービス業としては高く、問題ないレベルとなっています。
キャッシュフロー

キャッシュフローの推移をみると、営業CFは順調に増えており問題ありません。投資CFは営業CFと比べると非常に小さく、近年は積極的な投資は控えている印象を受けます。
2018年に財務CFが大きくマイナスとなっている理由は、この年におよそ30億円分の自社株買いを行った影響です。自社株買いによってキャッシュが社外に出ていったため、財務CFはマイナスとなっています。
安全性
バランスシート

バランスシートを見てみると、流動負債に対して流動資産のほうが金額が大きくなっており、流動比率は246%と問題ないレベルです。
流動資産の内訳

流動資産の内訳を見ると、当座資産である現金及び預金や受取手形が90%以上を占めています。当座比率は237%で財務安全性は問題ないレベルです。
現金と自己資本比率

さきほど説明したとおり、2018年は保有している現金や預金を使って約30億円分の自社株買いをおこなったため、現金等の金額が下がっています。
また自社株買いは保有している株主資本を株主へ返還することになるため、2018年は自己資本比率もその分低下しています。
収益性
主な指標
項目 | 評価 | 実績 | 業界 |
---|---|---|---|
ROE [%] | 5 | 22.0 | 9.9 |
営業利益率 [%] | 4 | 10.8 | 6.7 |
売上総利益率 [%] | 1 | 23.7 | 36.5 |
ROIC [%] | 5 | 20 | 7.3 |
ROA [%] | 4 | 14.8 | 7.5 |

事業の収益性を表す5つの指標について、業種中央値を3として5段階で点数をつけています。
売上総利益率だけ低い点数となっていますが、それ以外の指標は高く点数付けしています。
売上総利益率が小さい原因は、アルプス技研の事業内容にあります。人材サービス業の中でも、アルプス技研のような人材派遣事業を主に行っている企業は、売上原価の中に派遣スタッフの人件費が含まれるため、売上総利益は小さくなりやすい傾向があります。
ROE

ROEは目標値の20%を上回る高い水準となっています。2018年はROEが増加していますが、 これはこの年に自社株買いを行ったため自己資本が減った影響が大きいと考えられるため、注意が必要です。
ROEの計算式
ROE [%] = 当期純利益 ÷ 自己資本 x 100
生産性
項目 | 評価 | 実績 | 業界 |
---|---|---|---|
一人当たり売上高 [百万円] | 1 | 7.5 | 23.7 |
一人当たり売上総利益 [百万円] | 2 | 7.6 | 9.7 |
労働生産性 [百万円] | 1 | 0.8 | 1.6 |
投下資本回転率 [回] | 5 | 2.8 | 1.4 |
先ほど説明したように、人材派遣サービスは利益率が低くなりやすいため、生産性の財務指標も業界中央値と比べると全体的に低くなってしまいます。
株主への還元
配当金
配当方針
WDBホールディングスの配当性向の目標値は50%です。また業績が悪化した場合でも最低10円の配当金は維持するという方針を出しています。
株主の皆様への配当は、配当財産の種類は金銭とし、連結ベースで配当性向50%を指標とする利益配分を行います。(中略)
引用元:有価証券報告書
さらに、安定的な配当の 継続を目指して、業績にかかわらず1株当たり年10円(中間5円、期末5円)の配当を維持することを基本方針としております。
一株配当と配当性向

2018年と2023年は記念配当10円を出しているため大きく増配しており、配当性向も一時的に高くなっています。記念配当の影響を除くと一貫して増配できており、配当性向も目標値の50%を維持できています。
今後も安定した株主還元を維持できるように期待したいです。