今回取り上げるのは、株式会社インテージホールディングス(以下インテージHD)です。インテージHDがどういう企業か、中核事業は何か、財務安定性や成長性に問題はないかについて見ていきたいと思います。
インテージHDはどんな企業か
会社名 | 株式会社インテージHD |
証券コード | 4326 |
設立年 | 1960年 |
従業員数 | 3186人 (2023年6月末時点) |
業種 | 情報・通信 |
何をやっている会社か?
インテージHDはパネル調査やカスタムリサーチをメインとしたネットリサーチの会社です。調査会社としては国内首位の売上を誇っており、2023年9月よりNTTドコモの連結子会社となっています。
主に以下の3つのサービスにより事業を展開しています。
- マーケティング支援(消費財・サービス)
- マーケティング支援(ヘルスケア)
- ビジネスインテリジェンス
マーケティング支援(消費財・サービス)
消費者や店舗から集めたデータを提供するパネル調査や、集めたデータを分析して顧客のマーケティング課題に応えるカスタムリサーチを行っている。
マーケティング支援(ヘルスケア)
一般用・医療用医薬品の市場調査や、医薬品開発のサポート業務を行っている。
ビジネスインテリジェンス
データ解析関連システムの開発やAIによるデータ活用ビジネスを行っている。
何で稼いでいる会社か?
サービス別の売上高の割合

インテージHDの売上高の内訳をみると、マーケティング支援(消費財・サービス)が6割以上を占めており、各サービスの構成割合は近年あまり変化はありません。なおインテージHDは期末決算が毎年6月のため現状は2024年の決算は空欄にしています。
マーケティング支援(消費財・サービス)の売上高の内訳
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マーケティング支援(消費財・サービス)の売上高をセグメントごとに分けてみると、最も割合が大きいのはパネル調査であり、ついでCR-web(カスタムリサーチのWeb調査)です。カスタムリサーチは顧客の要望に合わせてカスタマイズされた調査のことを言います。
近年、パネル調査とカスタムリサーチサービスは主要顧客の消費財メーカーのビジネス環境悪化の影響を受け、売上は増加する一方で営業利益は減少しています。
パネル調査がモニターを固定した継続的なデータであるのに対して、カスタムリサーチはお客様の様々なマーケティング課題に対し、お客様ごとの要望に合わせてカスタマイズされた調査およびコンサルテーションを行うことです。
引用元:インテージHD グループの事業
ファンダメンタルズ分析
主なKPI指標
指標 | 実績 | 業界平均 |
---|---|---|
営業利益率 [%] | 6.2 | 8.3 |
自己資本比率 [%] | 69.3 | 64.3 |
流動比率 [%] | 224 | 271 |
ROE [%] | 11.4 | 9.6 |
労働分配率 [%] | 42.9 | 39 |
配当利回り [%] | 2.7 | – |
成長性
売上高と営業利益率

キャッシュフロー

2020年をピークとして近年は営業CFが減少傾向です。その影響もあるのか、投資CFも控えめ水準で推移しています。
マーケティングリサーチ業界の市場規模

日本マーケティング・リサーチ協会の調査によると、インターネット調査やグループインタビューといった従来型の市場調査の市場規模がコロナ禍以降は伸び悩む一方で、従来型ではない、いわゆるインサイト産業と呼ばれるセグメントの成長が大きくなってきています。
インサイト産業セグメントは集めたデータの分析や、分析結果に基づいて課題の解決方法を顧客に提案するコンサルティングの業務等が含まれており、特に経営コンサルティング/シンクタンクのセグメントの割合が大きいです。これらの傾向から、今後のマーケティングリサーチ業界は、よりリサーチ結果に付加価値をつけられる企業が成長していくのではないかと考えられます。
安全性
バランスシート

流動資産の内訳

直近の決算資料によると、流動比率は224%、当座比率は187%でした。財務安定性としては問題のないレベルではありますが、ものすごく安定性が高いというわけではないので、今後の財務安定性の推移は注視する必要があると思います。
現金と自己資本比率

現金等の金額や自己資本比率は増加傾向であり、良い傾向を示しています。
収益性
ROE

2020年はコロナによる4月~6月の業績悪化の影響もあり、ROEは大きく低下しています。それ以外の年では業界平均を上回る水準ではあるものの、目標値であるROE12%にはいま一歩届いていません。
生産性
原価率と労働分配率

実績 | 業界平均 | |
---|---|---|
売上高原価率 [%] | 65.3 | 57.6 |
販管費率 [%] | 28.5 | 33.3 |
労働分配率 [%] | 42.9 | 39.0 |
株主への還元
配当金
配当方針
2026年6月期までの配当は累進的とし、最終年度における配当性向は50%を目指す方針です。
2024年6月期の剰余金の配当につきましては、2023年8月7日付「配当方針の変更に関するお知らせ」に記載のと おり、第14次中期経営計画期間(2024年6月期~2026年6月期)の配当は累進的とし、最終年度の2026年6月期の連 結配当性向は50%を目指し、ROE(自己資本利益率)は12%を目標にしております。
引用元:有価証券報告書
一株配当と配当性向

過去10年間で配当金は増配を維持しています。特にコロナの影響による業績悪化があった2020年においても、一時的に配当性向を上げて増配傾向を維持しており、株主還元の意識は比較的高いと考えられます。